
こんにちは。家電コンシェルジュのSallyこと、神原サリーです。
先週、LGエレクトロニクスの方に取材してきました。お掃除ロボットの「HOM-BOT(ホームボット)2.0」やCESで話題になった「スタイラー」のことはすでにここでご紹介しましたが、もう1つおもしろいなと思ったことをお話しましょう。
それは、LGエレクトロニクス社の徹底した顧客ニーズの調査と、それに応じたものづくりやマーケティング戦略のこと。現在、インドではテレビをはじめとするAV機器市場において、サムスンやLGエレクトロニクスなどの韓国勢が席巻していますが、1995年にLGがインドに進出しようとした時には、そのトップシェアはソニーが占めていたのだそうです。
ところで、インドといえば元英国領。そのため準公用語として英語が使われています。とはいえ、インドは300もの言語があるといわれ、LGの調査でもインドの北と南では全く言語が違い、出身地の違うインド人同士が話す時には英語を使っていることも多いことが判明。
そこでLGが考えたのが、これまでソニーのテレビなどではメニュー操作をする際に英語で表記されていたものを、地域による言語に応じてメニュー操作ができるように表示させるようにすることでした。
300ものインドの言語のうち、特に多くの人に使われている言語は19だそうですが、その中から12ほどを選び、メニュー操作時にこれらの言語で表示できるようにしたのです。
「まず、言語を選んでください」―そこから始まるテレビ操作が、誰にでもとても使いやすいとインド市場に受け入れられるきっかけになったといいます。
そのほかにもまだ、こんなエピソードもあります。少しずつインドになじんできたLGエレクトロニクスのテレビですが、ではいったいインドの人たちに親しまれているのはどんな番組なのだろうと調べてみたところ、日本では一昔前までは「野球」、今では「サッカー」といった感じですが、インドでは「クリケット」なのですね。クリケットのルールをよく知らなくて申し訳ないのですが、何だか非常に長いゲームになることもあるのだそうで、それをひたすら眺めていたりする家庭もあるのだとか。
そこで考えたのが、気軽にテレビでできるクリケットゲームを最初からテレビに搭載しておくこと。これは、子どもたちをはじめ、大人気になり「テレビを買うならLGのもの」というふうになるほど、大当たりした企画だったといいます。
また、一口にインドと言っても、電器店のない地域もあったため、郊外や地方都市向けに「トラックの荷台をショールームにする」という手法も編み出されました。LGのテレビを知ってもらい、その地域の人たちと仲良くなるために、そのショールームを兼ねた荷台で「のど自慢大会」を行うのが定番に。インドの人たちは音楽に合わせて踊るのが大好きなので、またたく間に人が集まってきて、ついでにテレビのことを知ってもらうきっかけにもなったというわけです。
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こんなふうに顧客について徹底的に調べ、そのニーズに応えていく手法を「LGスタイル」と呼ぶのだと、取材に対応してくださったキムさんはおっしゃっていました。
そういえば、ちょうど3年前にLGの携帯電話「PRADAフォン」の発売が遅れた理由について、ここにもご紹介したことがありました。それは、「2007年に世界初のフルスクリーンの静電式タッチパネルの携帯電話として世界40カ国に同時発売された際、日本だけが8カ月遅れになったのは、日本向けだけ『感圧式』にチェンジしたから」ということでした。
日本のPRADAフォンの発売が8か月遅れた理由: Sallyの家電研究室
詳細は、上の記事をお読みいただけるとうれしいのですが、PRADAフォンを好むような日本人女性は美しくネイルを施して爪を伸ばしている。そのため「指の腹で操作をする静電式のパネルでは、メール等が打ちづらい。爪の先でも操作しやすい感圧式にすべき」という考えのもと、日本向けの特別仕様モデルが作られたというわけです。
これも、インドのテレビ同様、「LGスタイル」だったのですよね。
今回の取材での話が、以前発表会で聞いた話とつながって、なるほどね!と腑に落ちたのでした。
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ところで、最後にLGの3Dテレビのことも聞いてきたので、ご紹介させてください。

LGが昨年6月から日本で発売している3Dテレビは、FPR方式というもの。
既存の3Dテレビの方式(SG)は、右目用と左目用の映像を交互に表示させる方式をとっているため、フリッカー(ちらつき)が発生しやすく、3D映像を見るためには、シャッター機構のある特別なメガネが必要になります。
FPR方式の場合、右目と左目用の映像を同時に表示するため、ちらつき感がほとんどありません。シャッターレスの偏光メガネを採用しており、SG式よりもぐっと明るい映像になっているのも特徴です。

シャッター機構がいらないので、メガネも軽く、充電も不要。こんなふうにデザインもいろいろ楽しめます(価格も1000円程度)。
テレビ側とメガネ側を同期させる必要がないので、部屋のどこにいてもこのメガネをかけていれば自分のところに飛び出してくる感じで、視聴することができます(視聴範囲は約178度)。
私は黒物のことは詳しくないので、何がいい、どれが素晴らしいということはいえませんが、実際に試させてもらって、ちらつきがなくて目が楽なこと、真正面でなくても3Dを楽しめること、映像がとても明るいことには納得感がありました。メガネが軽いのもよかったです。若干気になる点といえば、映像の精細感がやや欠ける点でしょうか。
個人的には3Dテレビを家で見る必要性を感じていないので、「これ、欲しい!」という感動はなかったものの、3Dテレビに魅力を感じている人には、こうした方式があることも知っておいてほしいなと思いました。
