2016年01月09日

【蔦屋家電再訪】2001年発売の東芝のIH調理器から『家電の復刻』について考える

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こんにちは。家電コンシェルジュのSallyこと、神原サリーです。

昨日、久しく訪れていなかった二子玉川の「蔦屋家電」を訪れました。応援しているSONYのAROMASTICのプロジェクトの体感イベントが開催されていると聞いて、様子を見に出かけたのですが、たまたま声をかけてくださった「食」を担当するコンシェルジュの方とすっかり話しこみ、食関連(キッチン家電、冷蔵庫など)のコーナーを案内していただくことになったのでした。

実は「蔦屋家電」には、たぶん私の期待値が高すぎたこともあって、オープン当初から「これでは残念、もっとできることがあるのでは?」とずっと思ってきました。これでが代官山の蔦屋書店に家電を散りばめただけではないかと。蔦屋家電のキャッチコピーの1つに「毎日が家電万博」というものがあるので、見ているだけでなんとなく心弾むのであれば、これでいいのかもしれませんが、「家電店」であるのなら、購入に結び付くような、もっとその先のやり方を模索する必要があるのではないかと常々思ってきたのです。ただ、こぎれいに並べただけで、『暮らしの中での提案のようなもの』が足りないような気がして、残念に思っていました。

ただ、今回、売り場を丹念にまわってみて、博物館のような蔦屋家電だからこそできる、1つの形のようなものが見えたようにも思いました。そう思ったきっかけは調理家電コーナーの一角に置かれていた、東芝のIH調理器にあります。

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棚の下のほうの、あまり目立たない場所に置かれていたそれは、とても家電には思えないような、とても端正で落ち着いたたたずまいを見せていました。

パッと見には、とてもシンプルなホワイトのセラミック製の土鍋に見えますが、底部の厚みのある部分に「TOSHIBA」の文字が見えますし、ここが加熱部のようです。

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操作部は指で押すと出てくるスライド収納式のなっているため、操作をしていない時にはとてもコンパクトで美しいのですね。

隣には黒い鍋のものも置いてありました。

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こちらはなんと南部鉄器製です。

なんて美しい! なんて素晴らしい! 東芝がこんな素敵なIH調理器を発売していたなんて。

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ところがこの2つのIH調理器の間には『参考商品』と書かれたプレートが置いてあるではありませんか。

担当のコンシェルジュの方に「どういうことですか? これから発売予定? 発売時期が未決定ということですか?」と尋ねると、その脇に置いてあった説明文を示してくださいました。

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(画像をクリックすると大きくなります)

読みづらいと思うので、ここに全文を転記しますね。


東芝 IH調理器 IHC-25シリーズ(2001年発売)
デザイナー 松本博子

今から約15年前に発売された、IH調理器と鍋を一緒に使うことを考慮して、デザインされたIHC-25シリーズは、今こうして見ると、なんとスタイリッシュなのだろうか。
操作盤も引き出し式で必要な時以外は顔を見せない。
専用の鍋は、南部鉄、セラミックと、職人の手でひとつひとつ作られているというこだわりの逸品だ。
しかもなんと、南部鉄の蓋を裏返すと、鉄板として使えるというニクい機能を持つ―――
今から約15年前という時期が早すぎたのか、残念ながら現在は生産終了になってしまっている。
食卓で鍋を囲む、家族や仲間とのこれからの楽しみに復刻を願う声も多く寄せられている。

2002年 グッドデザイン賞 金賞受賞(2年連続)
2003年 レッドドットデザイン賞 受賞(ドイツ)

IHC-25PCシリーズ参考価格
IH調理器 ¥17,500
専用鍋 ¥6,000〜8,000

つまり、2001年に発売され、数々の賞も受賞した名品の復活(復刻)を願い、売り場を訪れる顧客にそれを問うているのでした。

こうした取り組みは、たぶん普通の家電量販店では無理でしょう。目利きのしかも、家電に愛のあるバイヤーさんやコンシェルジュの方々の思いがあり、整然としたある意味博物館のような売り場を作っているからこそ、できることなのだと、感動で胸がいっぱいになってしまいました。

アトリエに戻ってから、このIH調理器IHC-25PCシリーズについて、少し調べてみたところ、グッドデザイン賞において、2年連続で金賞を受賞したこのIH調理器は、デザイナーが商品企画段階から生活者の視点で提案し、鍋としての本格的な作り込みにこだわって、製造のベスト・パートナーを求めて全国各地に足を運び、実現したものだとのこと。「真摯な開発姿勢と、企業内デザイナーの新しい役割を一過性のものとせず、継続的に取り組んだことが評価されました」と受賞理由の説明がありました。現在、デザイナーの松本博子氏は母校である女子美術大学の教授を務められているようです。

当時、どれくらいヒットしたのか、私にはわかりません。今でも、東芝のホームページには「生産終了品」としてこのIH調理器のことが掲載されています。


今、発売されたたら、どんなに人気が出ることかと思わずにいられませんし、15年も前にこんなに素晴らしい製品を発売していた東芝の、今の姿がなんとも残念に思われます。

このIH調理器に関わらず、時代が早すぎたため(もしくは、きちんと伝えられなかったため)に消えてしまった家電たちを見直すという『復刻』という道もあるのではないかと、考えさせられました。