2019年10月26日

ルイスポールセンのあかりとグリニッチのビンテージ家具とヒュッゲと

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こんにちは。家電+ライフスタイルプロデューサーの神原サリーです。

今年60周年のアニバーサリーを迎える北欧デンマークのルイスポールセンのショールームで取材をさせていただく機会を得ました。名前は知らなくとも「その照明、見たことがある!」というのが多いのが同社の代表的なPH5という名作です。

これは1958年にポール・ヘニングセンがデザインしたもので、「PH5」という名前もその頭文字からきたものです。大きなポイントが電球を覆い隠してまぶしさを取り除いている「グレアフリー・デザイン」だということ。そして、「対数螺旋」というカーブを持ったシェードが光を効率よく集めて、テーブル面に500ルクス以上の明るさを得ることができるのです。ちなみに対数螺旋とは、37度の角度で光が入って出ていくもの。ショールームにはこの仕組みをわかりやすく説明した機器も置かれていて勉強になります。


北欧ではシーリングライトのように部屋全体を煌々と照らすあかりを使っていませんが、あかりを上手に組み合わせて居心地のいい空間を作っています。今回取材したショールームも間接照明しか使っていないので部屋全体としては明るすぎない落ち着いた空間になっているのですが、このPH5の下にあるテーブルでお話をうかがっていると手元のノートがものすごく明るく照らされてメモを取りやすいことにびっくりしました。


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PH5の吊り下げ方にも秘密があって、卓上から器具の下端の距離を60cmと低く吊り下げることでテーブルを囲む人々の表情を柔らかく美しく見せる効果があるのですね。そして、十分に明るいのにまぶしくなく、シェードによって生まれる光のグラデーションがなんとも心地よいというこれまでにない照明体験ができたのでした。


ヒュッゲな世界観を作るのに重要な照明について取材した後で足を運んだのが、代官山にショップを構え北欧のヴィンテージ家具を扱う「グリニッチ」の隠れ家。目黒から徒歩7〜8分に位置する築30年ほどのマンションの1室で、同社の家具を中心にそれ以外の家具や雑貨も置かれた実験的な住まい。「実際に人が住んでいないと生きていない空間になる」という考え方から、なんとここは同社の社長さんの住まいでもあるのです。グリニッチは鳥取県の米子市にも拠点があり(店舗とヴィンテージ家具のリペア)、代官山と米子を行き来しているため、東京の住まいがこの隠れ家というわけですね。


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窓の外には緑が広がって、目黒にいるとは思えない立地なのも素晴らしいのですが、濃いブルーの壁紙や椅子の張地を使って特注したカーテン、数々のヴィンテージ家具やグリニッチオリジナルの椅子などが共存し、なんとも居心地のいい空間になっています。週末の夜には低いガラステーブルを囲んでボードゲームをしたり、これまたヒュッゲな暮らしそのもの。


この日、案内してくださった安達さんは「インターネットの発達などで買い物などに費やす時間が少なくなり、家の中で過ごす時間がますます増えていく今、人生100年時代ともいわれている中で、どうやって過ごすのがいいのかを提示する場所にしたい」としています。「こだわった家具などを置くことで気持ちが前向きになったり、趣味に打ち込めたりする。壁のクロスを張り替えるだけでも気持ちが変わるし、それが趣味の一歩になることもある」と。

独立したキッチンも見せていただきましたが、そこにあったのは木製の取っ手がついたamadanaの冷蔵庫! あらためてみるとやっぱり「木目調」ではなく、「本物の木」が使われた冷蔵庫は本当に素敵でした。

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で、1つ思ったのがヒュッゲな暮らしに絶必なのは食洗機なんじゃないかなと。みんなでゆったりとした時間を過ごすには音が静かでみんなが使った食器をまとめて洗える食洗機があればだれかがキッチンにこもって後片付けというのがなくなりますものね。そしてリビングやダイニングにケトルやコーヒーメーカー、コンパクトでインテリア性の高い冷蔵庫などがあったらもっといいなと。秋になったら、そんな記事を家電Watchのコラムで書きたいなと思っています。

posted by sally at 11:22| デザインと暮らしと

2019年10月23日

キッチン家電をリビングダイニングへ。トーヨーキッチンスタイルのISOLAが作る動線

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こんにちは。家電+ライフスタイルプロデューサーの神原サリーです。

ずいぶん前から提案しているのが「キッチン家電をダイニングやリビングへ」ということです。オーブンレンジも炊飯器も電気ケトルもトースターもコーヒーメーカーも、使う場所であるキッチンやリビングに置くことで家族みんながお手伝いをするきっかけづくりになるし、暮らしそのものがぐんと便利で楽しいものになるのです。昨年の秋に出版した「サリー流『効率家事』」でもこのことに触れていますし、住まいの雑誌などでも提案しています。

そのためにはダイニングに家電を置くためのワゴンがあると便利ですし、リビングとダイニングの境目にどちらからも取り出せるようになっていて、しかも間仕切りのような役目をする低めの棚を置くのもいいなと思っています。置き場所が変わると暮らし方も変わる…何より動線に変化が起きますよね。キッチンを「料理する人のお城」にしてしまって、「入るなオーラ」を出しているから家族が手伝いにくくなるのです。みんなで集えるキッチンやダイニングやリビングにするには住まいそのものを見直す必要があるのかもしれません。

そんな私を感動させたのが、名古屋に本社を置くトーヨーキッチンスタイル(旧トーヨー工業)から発表されたアイランド収納【ISOLA(イゾラ)】。

写真だけ見てもわかりにくいかもしれませんが、収納は壁からセンターへという考えのもと、キッチンだけではなく収納も「アイランド」という発想から生まれたのがこの「ISOLAイゾラ」。キッチンとリビングをつなぐコンパクトでデザイン性の高い収納家具イゾラは、キッチンを向いた面には冷蔵庫やオーブンなど大型家電を組み込むことができ、別の面には炊飯器やコーヒーメーカーなど小型家電を収納。リビング側の面は飾り棚になるのです。ね?これって、私が考えたとおりの機能をもった収納ですよね。

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両側から開閉可能で女性の身長程の高さなので部屋の中心に置いても圧迫感がなく使いやすいのもポイント。トーヨーキッチンスタイルは、LDK空間での動線を研究し、アイランド収納でキッチンとダイニングをつなぐことで、つかいやすいワーキングトライアングルが生まれることを発見したのだといいます。

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1935年創業の同社ですが、この30年ほどは「キッチンを単なる流し台からインテリアに変えたい」と奮闘してきたようで、1985年には実用本位から、くつろぎ楽しめるキッチン空間作りを目指し、インテリアとしての存在感を重視した斬新なキッチンユニットを提案。日本の伝統である漆を生かし扉材として採用し、キッチンの新時代を築き、その思想を貫いているといいます。

同社のウェブサイトを見ると、その後、イタリアンキッチンの考え方を取り入れ、「トーヨーキッチン=イタリアンデザイン」というくらい世界的にも知られるようになってきたのですね。昨年、今年とミラノサローネで心惹かれたmoooi(モーイ)やKartell(カルテル)の家具やインテリアをショールームで取り扱うなど目指す世界観が確固たるものであることがわかります。

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壁面を埋め尽くす収納や手の届かない吊り戸棚など、日本のキッチン収納は長らくものがたくさん入ることだけが重視されてきましたが、キッチンとリビングの間に収納家具を置くことで狭い空間でも多様に使えることを提案していきたいとしている同社の考え方に深く共感します。

今回のこのアイランド収納の【ISOLA(イゾラ)】も実際の家電と組み合わせて見せていくことでより具体的なイメージがわくでしょうし、収納の在り方にも変化が起きるかもしれません。まずは南青山にある東京ショールームを取材し、いずれは名古屋の本社にうかがってこれまでの歴史や今後目指していることなど、聞いてみたいと思います。さらに何かが始まりそうでワクワクします。

posted by sally at 12:58| デザインと暮らしと

2019年10月22日

LIXIL Designが描くこれからの暮らし〜間の間(あいだのま)

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こんにちは。家電+ライフスタイルプロデューサーの神原サリーです。

先週、DAIKANYAMA T-SITE GARDEN GALLERYで開催されていたLIXIL Design主催の「間の間-aidanoma-」のレセプションに出席してきました。LIXILといえば、今年4月に開催されたミラノデザインウィークに初めて出展していたのが印象に残っていますが、こちらはLIXILの中でも水回りを手掛けるINAXによるもの。今回はDESIGART TOKYO2019の一環として、同社のデザインセンターが主体となって“製品化されるかどうかも未定の最先端のデザイン”を世に問うものだとしています。

プレゼンテーションをしてくださったのは、デザインセンター エクステリアグループのデザイナー和田明日香さん。

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間の間(aidanoma)は、「区画を区切るような空間構成が主流となっている現代の暮らしにおいても、風や光、影、音などの“空間の響き”を感じることはとても大切なのではないか。今だからできる空間の響きを模索したい」という想いから生まれたコンセプトだといいます。

光、影、気配を感じることによって、空間と空間を心地よく響かせる提案として、「ゆらぎ」「かさなり」「ふくみ」の3つが展示されていました。

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こちらが「ゆらぎ」。折り重なるいくつもの線がゆらぎを生み、向こう側の景色を気配に変え、その美しい影が空間の広がりを生み出す「塀」に代わるもの。

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私は「景色を気配に変える」という言葉がとても心に残りました。「塀」で遮ったり、区切ったりするのではなく、その向こうの気配を感じて穏やかに生きていく暮らし。江戸の時代にあったような長屋であったり、京の町家の格子などを思わせるような感じがします。

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そしてこちらが、空との心地よいつながりを作る「かさなり」。本来なら、雨や風をしのいだり、光をさえぎるような「ひさし」に代わるものとして、木漏れ日のように幾重にも重なりあった光と影が、奥行きを感じるのびやかでニュアンスのある空間を生み出すとしています。

こちらのプレゼンで和田さんがおっしゃった「ゼロをプラスにするひさし」という言葉が印象的でした。これまでのひさしは自然界の雨、風、光をシャットアウトするもの、つまりマイナスをゼロにして住みやすくしようという考えから生まれていたわけですが、この「かさなり」は光や影、そして風などを味方につけて暮らしをより豊かにしようとしているのですね。

もちろん、従来の「ひさし」が必要な場所ももちろん存在するでしょうけれど、この美しい「かさなり」の考え方を踏まえて暮らしのエクステリアをデザインしていくとしたら、とても素敵な空間が生まれるに違いありません。それは見た目だけではなく、心に作用するのではないでしょうか。

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3つ目の「ふくみ」は、空気を含むようにカーブした形状が空間に響きをもたらして、ちょうどよい距離感のある間合いを生み出すものとして展示されていました。

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これはエントランスなどに活用したり、庭と外とを距離感をもって上手に仕切って“半目隠し”のような状態をつくるのに活用できそうです。

最後に3分間程度のコンセプトムービーも見せてくださったのですが、音楽を含め、本当に素敵で見とれてしまいました。こうした展示をもっと膨らませて、インスタレーションとしてミラノサローネ(ミラノデザインウィーク)に出展してくださったら、どんなに素晴らしいでしょう。LIXILのブランドメッセージを伝えるものとして、きっと注目されるに違いないと思います。

LIXILの広報さんによれば、このデザインセンターが立ち上がったのは2015年。それまで“デザイン”というものが2の次、3の次になりがちだった同社において、もっと重視しなければいけないとして、トップ直轄の部署として生まれたのだそうです。

今回、最後に少しだけご挨拶させていただいたLIXIL HOUSING TECHNOLOGY JAPANデザインセンター センター長の羽賀豊さんは元々ソニーにいらした方だというのにもちょっとびっくり。4年の歳月を経て、今回初めて製品ありきでないコンセプトとしてのデザインのお披露目になったのだといいます。

先日、日立グローバルソリューションズが国立に今年4月にオープンした研究所内の「協創の森」に足を運んだ際にも「これからはますますデザインに力を入れていく」という話がありましたが、LIXILしかり、日立しかり、大手の企業でさえもまだまだデザインに注力しはじめたばかりだということなのですね。

LIXILのデザインセンターが主体になって、ミラノデザインウィークに出展する日を楽しみにしています。
posted by sally at 16:00| デザインと暮らしと